骨粗しょう症について

骨粗しょう症について

骨粗しょう症とは、骨がスカスカの状態になって脆くなり、容易に骨折するようになってしまう病気です。主な原因として加齢が挙げられます。人間の骨は常に、破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成を行って、骨の新陳代謝を行っています。加齢によってこのバランスが崩れ、骨を形成するスピードより、骨を吸収するスピードが上回ってしまうことで骨粗しょう症は発症すると考えられています。

骨粗しょう症は男女比で言うと女性の割合が多く、80歳以上の女性では2人に1人が骨粗しょう症であると言われています。これは骨の新陳代謝の際、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが骨からカルシウムが溶け出してしまうのを抑制しているのですが、このホルモンの分泌量が閉経に伴って低下してしまうことによって、骨粗しょう症になりやすくなってしまうとみられています。

このほか、カルシウム不足やビタミン不足、さらには運動不足など生活習慣が影響している場合もあります。近年、男性でも骨粗しょう症が増加傾向にあると言われていますが、これは糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病が骨粗しょう症を引き起こす誘因となっていると考えられています。

骨粗しょう症の主な症状

骨粗しょう症自体には自覚症状がなく、そのため放置しておくと、転倒などのちょっとした衝撃だけで骨折する「脆弱性骨折」を起こす場合があり、そうすると日常生活動作(ADL)の低下を引き起こし、そのまま要介護となるきっかけとなってしまうこともありますので、注意が必要です。

骨粗しょう症によって、引き起こされる脆弱性骨折としては、以下のようなものがあります。

脊椎圧迫骨折 重いものを持ったり、くしゃみをしたりと、ちょっとしたことで背骨が押しつぶされたように変形するものです。気づかないこともあり、「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。コルセットで固定する保存療法があり、手術が必要となる場合もあります。
大腿骨近位部骨折
(大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折)
転倒したり足を捻ったりすることで、太ももの付け根の骨に発生するものです。強い痛みと内出血による腫れが生じ、歩行が困難になります。寝たきりの原因にもなってしまう骨折で、手術による治療が必要になります。
上腕骨近位端骨折 転んで手をついたり、肩から落ちたりするなどして、二の腕に近い部分が骨折するものです。骨折の程度によって、固定する保存療法を行うか、手術を行うか決定します。
橈骨遠位端骨折 転んで手をつくなどして、手首の親指側にある骨を骨折してしまうものです。骨折の程度によって固定する保存療法を行うか、手術を行うか決定します。

保存療法を行う場合も、手術治療を行う場合も、その後にはどの場合もリハビリテーションを行うことが重要となります。

骨粗しょう症の主な検査

早期に発見し、対処していくことが重要な骨粗しょう症ですが、自覚症状がないため、ある程度の年齢に達したら、一度検査しておくことが大切です。特に50歳以上の女性の方は、定期的に骨粗しょう症の検査をすることをお勧めします。検査法としては、以下のようなものがあります。

DXA(デキサ)法 主に大腿骨近位部や腰椎の骨密度を正確に測定するもので(全身に用いる場合もあります)、2つの異なるエネルギーのX線を利用して行う検査です。
超音波法 かかとや脛の骨に超音波を当てて測定するもので、X線を用いないため、妊娠中の方でも測定することが可能な検査です。
MD(エムディ)法 手の骨と厚さの異なるアルミニウム板とを同時にX線撮影し、骨とアルミニウムの濃度の比較によって測定する検査です。

以上の他、レントゲン検査によって圧迫骨折などの有無を調べる、血液検査や尿検査での骨代謝マーカーによって骨の代謝の状況を調べる、といった検査を行う場合もあります。
当院ではガイドラインで定められている高性能な骨密度測定器(デキサ法)で腰椎と大腿骨の骨密度をスピーディーに正確に診断します。

骨粗しょう症の主な治療

骨粗しょう症の治療では、食事や運動などの生活習慣面での改善による治療と、必要に応じて薬による治療とを組み合わせて行っていくことになります。

食事に関しては、まずカルシウムをしっかりと摂ることが大切です。さらにカルシウムの吸収を助けるビタミンDや、骨を強くする働きを持つビタミンKを含んだ食物を積極的に摂るように心がけましょう。

  • カルシウムを多く含む食品……乳製品、大豆製品、小魚など
  • ビタミンDを含む食品……サケ、サンマ、ウナギ、シイタケ、卵など
  • ビタミンKを含む食品……ホウレンソウ、ブロッコリー、納豆など

※ビタミンDは、日光に当たることにより皮膚でも作られるので、散歩や窓際で日光に当たるようにしましょう。
※他の病気がある場合、気を付けなければいけない食べ物もありますので、詳しくは医師にご相談ください。

また、適度に骨に負荷をかける運動は、骨を作る細胞が活性化し、骨を強くすることができます。ウォーキングなど適度な運動をすることは、骨粗しょう症の予防になります。ただし、すでに骨粗しょう症が進行している場合など、転倒や骨折につながってしまう場合もありますので、注意が必要です。当院でも骨粗しょう症予防のための運動指導やリハビリテーションに力を入れていますのでお気軽にご相談ください。

薬物療法としては、大きく分けて3つのタイプがあり、以下のようなものがあります。

骨吸収を抑制する薬 女性ホルモン製剤(エストロゲン)やビスフォスフォネート製剤、デノスマブ(抗RANKL抗体)など
骨の形成を促進する薬 活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)、ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)など
骨の主要な成分となる薬 カルシウム製剤

お薬には飲み薬や注射薬という違いのほか投与のタイミングや回数の違いもあります。患者さまの状況や骨の状態・症状等により、最適な治療を選択して処方します。骨粗しょう症の治療は、効果があらわれるまで1年以上と長くかかる場合が多いです。骨折をしないためにも、根気よく治療を継続する必要があります。痛みが消えた、なかなか骨密度が上がらないからと自己判断で薬を中止しないようにしましょう。薬が飲みづらかったり、気になることがあればお気軽にご相談ください。患者さま一人一人に合った長く続けていける治療を一緒に考えていきたいと思います。