肩の専門診療について

肩の専門診療

当院の院長は、肩の専門外来や手術を数多く手がけてきた肩関節のエキスパートです。四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)をはじめ、肩の痛みでお悩みの患者さまに対し丁寧に診察を行い、それぞれの症状やお体の状況に合わせて、様々な選択肢の中から適切な治療を行ってまいります。

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)について

四十肩・五十肩は診断が難しく、適切な治療を行うためには、正確な診断をする必要があります。当院では肩専門医として治療実績を重ねてきた院長が、四十肩・五十肩であるかどうか、他の病気が隠れていないかどうか、などを機能診察と高性能の画像検査(MRIや超音波)を用いて慎重に判断し、専門的な診療を行っていきます。

四十肩・五十肩とは

四十肩、五十肩という言葉はよく耳にすると思いますが、医学的には肩関節周囲炎と呼ばれるもので、文字通り40代・50代以降によくみられる肩の関節の痛みを指します。同じような症状があるものとしては、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、インピンジメント症候群、変形性肩関節症などがあります。

四十肩・五十肩の原因は、まだはっきりとわかっていませんが、関節を構成する骨や軟骨、靭帯、腱などが中年以降に老化し、周囲の組織に炎症が起きることで引き起こされると考えられています。またそれにより、肩関節の動きを良くしている肩峰下滑液包と呼ばれる袋や、関節を包む関節包が収縮、癒着してしまうと、肩の動きが悪くなり、拘縮や凍結肩といった状態になります。

四十肩・五十肩の症状

症状としては、
「腕を動かさなくてもズキズキと肩が痛む」
「夜間寝ているときに寝返りをしたり肩を下にしたりすると痛みで目が覚める」
といった安静時の痛みの他、
「高い所にあるものが取れない」
「服を着たり脱いだりするのが辛い」
「背中のファスナーを閉められない」
「洗濯物が干せない」
など、運動時痛や可動域の制限による症状がみられます。

四十肩・五十肩は、多くの場合、発症当初には強い痛みがありますが、しばらくすると痛みは落ち着いてきます。しかし、肩の動きの制限は残ったままで、動かすと鈍い痛みが感じられます。そのまま肩を動かさないでいると、肩の痛みはなくなっても、関節が癒着し肩が動かなくなってしまうため、早い段階から的確に診断し、痛みを取る治療やリハビリテーションを始めることが重要になります。

四十肩・五十肩の検査

診断では、丁寧な問診にて、特徴的な症状の有無などをお伺いするほか、詳細な肩周囲の機能診断でどこに問題があるのかを把握していきます。またX線検査やMRI検査、超音波(エコー)検査といった画像による検査を実施し、痛みの原因となっている部位を究明します。

これらの症状、機能、画像検査によって、骨折や靭帯の損傷など、ほかの疾患の可能性がないことを確認したうえで最終的に的確に診断していきます。また心筋梗塞でも肩の痛みが出る場合があり、これと区別するために心電図検査を行う場合もあります。

四十肩・五十肩の治療

治療としては、痛みが強い場合は、抗炎症薬や鎮痛薬の内服、湿布薬等を用います。痛みが強い場合には、超音波ガイド下にて(エコーを見ながら)、炎症を抑えるためのステロイド剤や潤滑効果のあるヒアルロン酸を肩関節内に注射し、早期に痛みを取る治療を行います。肩に石灰が溜まる石灰沈着性腱板炎を引き起こしている場合には、超音波ガイド下での石灰洗浄も可能です。

さらに痛みが落ち着いた段階で、関節が固まってしまうことを防ぐため、肩の診療経験豊富な理学療法士による機能改善リハビリテーションを行います。肩の拘縮が強く、疼痛が強い場合には、日帰り手術(徒手授動術、サイレントマニピュレーション)も行っています。
この日帰り手術は、超音波ガイド下の神経根ブロックで肩を確実に麻酔し、関節を包む関節包が収縮、癒着してしまった状態を、手の力によって引きはがしていくというものです。数か月~1年ほどで改善しない場合や、凍結肩になってから時間が経っている場合、患者さまが早期回復をご希望の場合などは、こうした治療を行うことも可能です。

プラスアルファの治療

四十肩・五十肩だから放っておけば治ると放置していると、難治性になる場合があります。そうなる前に、早めに専門医を受診することをお勧めします。

その他の肩関節疾患について

肩こり

肩こりは肩甲骨周囲にある僧帽筋という大きな筋肉を中心とした各種の筋肉が血行不良などによって硬くなる(凝る)状態のことで、首すじや首のつけ根から肩、背中にかけて張った、凝った、痛いなどの症状が現れ、頭痛や吐き気を伴う場合もあります。

筋肉に負担をかけるものとしては、猫背などの良くない姿勢、運動不足、眼精疲労、ストレス、仕事、スマートフォンなどで同じ姿勢を続けることなどが挙げられます。さらにいつも同じ側の肩にショルダーバッグを掻けていたり、冷房で体を冷やしていたりすることも肩こりの原因になります。当院では頑固な肩こりに悩んでいる方に対して痛みや可動域を改善させる目的でハイドロリリース(筋膜リリース)を積極的に行っています。

肩腱板損傷・肩腱板断裂

腱板は筋肉の腱が集まって板状になったもので、肩甲骨と上腕骨の間に挟まれている部分があるため、周りの靭帯などから圧迫や摩擦を受けやすくなっており、構造的に損傷しやすくなっています。これが加齢による変性で徐々にすり切れてしまったり、転倒や落下による打撲、重たいものを持つといった急激な肩への負荷で、切れてしまったりすることにより肩腱板断裂が発症します。

症状としては、肩をあげた際に痛む、肩があげられない、夜にうずくような痛みがあるといったものがあります。いわゆる四十肩・五十肩の症状を訴える患者さまでは、この肩腱板断裂である場合も多くなっていますので、「放っておけばそのうち治るだろう」と放置せずに一度専門的な診断・治療を受けることをおすすめします。当院の院長はこれまで肩腱板断裂の患者さまの手術を含めた治療経験も豊富であり、疼痛管理治療、リハビリテーションなど患者さまの背景に合わせた適切な治療を行っていきます。
当院では「長い間、肩の痛みで困っているけれど、手術はしたくない・・・」といった患者さまのために、再生医療(PRP療法)もご提案しております。

プラスアルファの治療

変形性肩関節症

肩関節を構成する肩甲骨関節窩や上腕骨頭といった骨の表面は軟骨で覆われています。軟骨は骨同士の間にあってクッションとなったり、関節をスムーズに動かしたりするなど、大きな役割を果たしています。この肩関節の軟骨がすり減り、関節が変形した状態が変形性肩関節症です。

軟骨がすり減ることで炎症が生じ(肩関節炎)、軟骨の摩擦が進むとやがて骨棘形成がおき、肩関節が変形していきます。すり減る原因としては、スポーツなどによるオーバーユース(使いすぎ)があります。炎症が起きると痛みや腫れが見られたり、肩の可動域が狭くなったりするようになり、服が着替えにくい、料理や洗濯などの家事が行いにくい、といったことがひきおこされます。痛みは肩を動かしたときだけでなく、安静時や就寝時に見られる場合もあります。当院では、潤滑剤であるヒアルロン酸を超音波装置(エコー)を用いて関節内に確実に注射し、リハビリテーションを行います。

上腕二頭筋長頭腱炎

主に肘を曲げた際に使われる、いわゆる“力こぶ”の筋肉が「上腕二頭筋」です。「二頭」という名の通り、筋肉の始まりが二つあり、それぞれ長頭腱と短頭腱と呼ばれます。長頭腱は肩関節の関節唇という部分に付着し、結節間溝と呼ばれる、上腕骨の大結節と小結節の間にある“窪み”を通ります。通常、上腕二頭筋が収縮すると、長頭腱がこの結節間溝の間をスムーズに滑走します。しかし、何らかの理由で摩擦が発生し炎症を起こしてしまうと、上腕二頭筋長頭腱炎と呼ばれる状態になります。

症状としては主に肩の前面で痛みが生じ、徐々に肩から力こぶにかけて痛むようになり、さらに悪化すると、肩から手首にかけて痛みを感じるようになります。日常生活においては、重い物を持ったとき、手をあげたとき、手を背中に回したとき、ドアノブを回すときなどに痛みを感じます。

当院では超音波装置(エコー)をガイドに上腕二頭筋長頭腱周囲に正確に注射針を刺し、痛み止めのお薬を注入し、症状の緩和を図っています。肩関節の動きが悪い方も多く、腕の使い方の指導や理学療法士によるリハビリテーションも積極的に行っています。

石灰性腱板炎

夜間、突然に起こる激痛で始まることが多いという特徴がある疾患です。痛みで眠れなくなり、関節を動かすこともできなくなります。40~50代の女性に多くみられるというのも特徴で、強い症状が1~4週続く急性型、中等度の症状が1~6ヵ月続く亜急性型、運動時痛などが6ヵ月以上続く慢性型があります。

発症のメカニズムとしては、肩腱板にミルク状のリン酸カルシウム結晶(石灰)が付着することから始まります。この石灰は、当初は濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。これが溜まって体積を増していくことで痛みが悪化していき、腱板から滑液包内に破れ出る際に激痛となります。なぜ石灰が沈着するのかは、まだよくわかっていません。
当院では激痛の患者さまに対して超音波装置(エコー)をガイドに石灰沈着部に正確に注射針を刺し、石灰を吸引洗浄する処置を診断したその場で行うことができます。他には消炎鎮痛剤を処方したり、肩関節周囲炎や腱板断裂と同様にリハビリテーションを行います。

肩鎖関節炎

肩鎖関節とは、肩関節のすぐ横にある関節で、鎖骨と肩甲骨との間の連絡をしている関節です。肩甲骨の屋根に当たる部分である肩峰(けんぽう)と鎖骨の先端である鎖骨遠位端からなっています。この部分に何らかの理由で炎症が起きるのが肩鎖関節炎ですが、肩が痛い、といったときに見落とされがちな疾患で、肩の上方が痛い、といった時にこの肩鎖関節炎が疑われます。

加齢や軟骨のすり減り、使い過ぎ、繰り返しの負荷などが原因で、肩鎖関節の部分を押すと痛い、肩に痛みがある方の手で、胸の前を横切って逆の肩の後ろを触る動き(水平内転)をすると痛みが生じます。
当院では超音波装置(エコー)をガイドに肩鎖関節部に正確に注射針を刺し、痛み止めの薬を注入し、症状の緩和を図っています。姿勢の異常や肩甲骨周りの機能異常に対してリハビリテーションも積極的に行っています。

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群はTOS(Thoracic Outlet Syndromeの略)とも言われる疾患で、肩のこりや痛み、しびれの他、腕や手にもしびれが現れたり、動かしにくくなったりといった症状がみられるものです。胸郭出口とは、首と胸の間にある神経などの通り道で、脳から伸びる神経が、頚椎から肋骨と鎖骨の間を通り、脇の下を経て腕へと伸びていきますが、胸郭出口の部分で筋肉や骨によって圧迫されることで、症状が現れるのが、胸郭出口症候群です。

もともと、なで肩の女性や重いものを頻繁に持ち運ぶ仕事の方などにおいて、骨格や筋肉の付き方などが関係し、圧迫を受けやすくなります。それにより、腕を挙げる動作をした際に腕や肩にしびれ、痛みを感じたり、肩甲骨周囲に痛みがあったり、肘から先の小指側のピリピリとしびれるなどの症状かあらわれます。さらに握力の低下や指先が器用に動かなくなるといったこともあります。
理学療法が重要で肩甲骨周囲のリラクゼーションを図り、肩関節の正しい動きを獲得できるようリハビリを行っていきます。
さらに当院では超音波装置(エコー)をガイドに原因となる神経の周囲に生理食塩水を注入するハイドロリリースを行うことができます。

ハイドロリリース

反復性肩関節脱臼

肩関節はほかの関節に比べて最も脱臼しやすい関節と言われ、一度脱臼を起こすと、関節が不安定になり、その後は脱臼しやすくなって繰り返してしまう場合があります。これを反復性肩関節脱臼と言います。そのほとんどが前方への脱臼であることから、肩関節前方不安定症と呼ばれることもあります。最初は外傷性の脱臼であることが多く、ラグビー、アメフト、柔道などのコンタクトスポーツに多くみられます。

肩関節が不安定になると、スポーツ活動以外でも脱臼が起こりやすくなり、服の脱ぎ着や寝返りの動作、後ろに腕を伸ばしたときなど、日常生活においても脱臼しそうな感覚になって痛みを感じることがあります。脱臼してしまった場合は自分で整復できる場合もありますが、自己整復できないことも多く、その場合は専門機関で整復を行う必要があります。
当院では肩関節の安定化、脱臼予防のためのリハビリテーション・トレーニングに力を入れています。頻回に脱臼を起こす・不安定感が治らない方には手術治療をご紹介する場合もあります。

投球肩

野球肩とも呼ばれ、野球の投球動作に関連して発症する肩の障害の総称です。野球以外にもサーブやスマッシュなどをするテニス、バレーボールなどのスポーツでもみられ、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグショルダー)、関節唇損傷、動揺肩など複数の障害が含まれるものです。

原因としては、腕を大きく振る投球動作を繰り返すことによって、肩関節を構成する腱や筋肉などの組織が炎症を起こしたり損傷したりするなど、障害を受けることが挙げられます。症状としては肩に痛みや引っ掛かりを感じ、それ以上に肩があげられず、投球動作などがうまくできない、投球後に痛みがある、腫れるといった状態になります。成長期のお子さまでは、投球肩をそのままにしてしまうと成長障害を起こし、左右の腕の長さに差が生じてしまう場合もあります。
当院では野球選手の治療経験豊富な理学療法士と共にコンディショニングに加えて投球動作のチェックも行っています。屋外に設置したブルペンにて実際に投球を行いながら再発予防、競技能力の向上を図っていきます。