当院では整形外科専門医・肩関節専門医・スポーツドクターとして、クリニックで可能な専門治療を提供できるよう日々努めております。標準的な治療をベースに、それだけでは補えない患者さまのニーズに幅広くお応えできるように、日帰り手術や自費診療など様々な選択肢をご提案しながら、「プラスアルファ」の治療が受けられる体制も整えていきます。「どうせ治らないから…」とあきらめてしまう前に、まずは一度ご相談ください。
主に四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)を治療する新たな方法のひとつが、サイレントマニピュレーション(非観血的関節授動術)です。四十肩・五十肩では徐々に肩の動く範囲が制限され、寝ている時も痛むといった状況になります。これは肩関節の関節包という部分に炎症が起き、拘縮する(縮んでしまう)ことが原因と考えられています。この状態は「凍結肩」とも呼ばれますが、この凍結肩に対しての治療がサイレントマニピュレーションです。当院では、入院の必要のない、メスで切らない日帰り手術として、このサイレントマニピュレーションを行っています。
サイレントマニピュレーションは、頸から上肢につながる神経に麻酔をかけ、硬くなってしまった関節を包んでいる袋状の膜(関節包)を徒手的に(腕を動かすことによって)切離し、肩の動きを改善していく治療法です。対象となるのは、基本的にリハビリテーションを行っても肩関節の動きが悪い状態のままで変化がない患者さまで、腕が肩までしか挙がらない、肘を脇腹につけて腕を外に回すことができない、背中に手を回す時にお尻の高さで止まってしまうといった場合が適応になります。実際にサイレントマニピュレーションが適応となるかどうかは、肩機能診察とMRI診断をもとにした専門医の診察が必要です。
まず、超音波(エコー)画像診断装置を用いて、そのガイド下で肩関節を支配する神経の根本を探り、そこに局所麻酔薬を注射し、神経根ブロックで完全に肩を麻酔します。
麻酔が効いてくると、患者さまご自身では自分の肩が動かせなくなります。その状態で、医師が徒手的に(手によって)肩関節を全方向に動かして、縮んだ関節包を剥がし、肩の可動域を改善していきます。
治療中、関節包の剥がれる「プチプチ」という音がすることがありますが、麻酔が効いているため痛みはありません。全方向に肩の可動域が改善したことを確認して手技は終了です。最後にレントゲンで問題ないことを確認し、肩関節内に炎症止めの注射を行います。
麻酔は7~10時間ほど効いており、その後、自分で動かせるようになります。それまでは三角巾を使用します。当日は自動車や自転車の運転はできませんので、ご注意ください。
サイレントマニピュレーションを行った直後は肩関節の動きに制限はなくなりますが、そのままにしていると徐々に動きが鈍くなってきてしまうため、通院によるリハビリテーションの継続が非常に重要です。また理学療法士の指導の下、ご自宅でも運動療法を行っていただき、3か月から6か月間は積極的に肩関節を動かしていただく必要があります。
サイレントマニピュレーションは保険適用内で行えます。当日の診療費は3割負担で5,000〜6,000円程度(処方箋料、検査料は別)になります。また、術前後の画像検査やリハビリに関しても、保険の範囲内で行えますのでご安心ください。
再生医療とは、病気やケガなどによって身体の機能に障害や不全が生じた際に、その部位を細胞などが基となった材料の利用によって治療し、機能を「再生」するというものです。これまで治療法がない、あるいは治療が難しかった症例に対し、新しい方法でのアプローチをしていくもので、その可能性に対し大きな期待が寄せられています。
整形外科の分野でも、再生医療を用いた新しい治療法が登場しており、注目を集めています。そのひとつがPRP治療です。これは患者さま自身の血液に含まれた成長因子による修復機能を促進し、治癒を目指す再生医療で、変形性膝関節症をはじめ、様々な関節・筋腱の疾患・損傷に対応するものです。当院では、PRP(多血小板血漿)を活性化・濃縮したものを注入するPRP-FD療法(PFC-FD™療法)を行っています。
※PFC-FD™は、セルソース株式会社の提供する商標です。
「PFC-FD™」は、Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryの頭文字をとったもので、血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものの商品・サービス名です。血小板の力を活用する治療法であり、手術は必要ありません。現在、膝・肩・肘などの痛みで困っていて、ヒアルロン酸関節内注射などでは効果を実感できていないが、手術には抵抗がある、という患者さまに検討していただきたい治療法となっています。
再生医療としては、PRPが知られています。これは多血小板血漿(Platelet Rich Plasma)のことで、患者さまご自身の血液中にある血小板および一部の白血球などを凝縮して活性化したものを指します。海外で活躍する日本のプロスポーツ選手が、PRP治療により肘の靭帯損傷から復帰したこともよく知られていますが、PFC-FD™はこのPRPから成長因子を抽出・凍結乾燥したものです。
血小板に含まれる成長因子には、細胞を修復したり、血管を新生させたり、抗炎症作用を増幅させたり、創傷を治療したりする、PDGF、FGF、EGF、VEGF、TGF-βなどがあり、これらの成長因子を患部に注射することで、組織修復が期待されます。この治療法で症状が抑えられている間に、各種リハビリテーションを実施し患部周辺の筋肉を鍛え、関節への負荷を軽減することにより、生活の質を高めることができます。
PRP-FD療法の改善効果が期待できる疾患は主に以下のようなものです。現在もっとも活用されている疾患は変形性膝関節症です。
疾患 | 対象部位 | 疾患の例 |
---|---|---|
変形性関節症 | 肩 肘 膝 足首 | 変形性肩関節症 変形性肘関節症 変形性股関節症 変形性膝関節症 変形性足関節症 |
靭帯損傷 | 肩 肘 膝 | 肩腱板損傷 肘関節靭帯損傷 膝十字靭帯損傷 |
腱炎 | 肩 膝 足首 | 肩腱板炎 肘内側側副靱帯損傷(野球肘) 上腕骨外側上顆炎(テニス肘) 上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘) 膝蓋腱炎 アキレス腱損傷 足底筋膜炎 |
このほか、半月板損傷や靭帯損傷、肉離れなどの運動器疾患でも効果が期待されると考えられ、スポーツ選手を中心に様々な治療に活用され始めています。
この治療では、患者さま自身の自己治癒力を高め、膝関節をはじめとした様々な関節・筋腱の症状を持続的に軽減していくことが期待できます。100%自己の血液を利用するため、副作用のリスクも少なく、切開する手術は必要ありませんので、入院することなく、日帰りでの処置が可能です。採血と注射のみですので、手術を避けたいという患者さまにおすすめです。
患者さまそれぞれの血小板などの働きにより、治療効果には個人差があります。また注射した部位に痛みや炎症が生じる場合があります。感染症が認められた場合は、治療を行えないことがあります。本治療は保険適用外の治療のため、費用は全額、患者さまの自己負担となります。
PRP-FD療法は保険適用外のため自費診療となります。
診察・X線などの画像検査は保険適用での診療となります。
医療費控除の対象となりますので、領収書は大切に保管ください。
1回につき | 準備中 |
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感染症で実施できない場合 (血液検査費用のみ発生) |
準備中 |
01問診・診察を丁寧に行い、現在の患者さまの状態や画像所見から、本治療が必要かどうかをご相談いたします。
02患者さまの自己血液を約50ml採取し、清浄度の高い再生医療センター(厚生労働省から「再生医療等安全性確保法」に基づく「特定細胞加工物製造許可」を受けた、セルソース再生医療センター)に送付し、検査・加工を行います。
加工には約3週間かかり、その間は必要に応じて従来の治療を継続していきます。
03再生医療センターで加工・フリーズドライ化した患者さまご自身の血小板由来「成長因子」を当院にて患部に注射します。
04PRP-FD療法はリハビリテーションとの相性が非常に良いと考えられており、打ったからもう終了ではなく、効果を最大限引き出すようリハビリも並行して行います。